イベント

水曜朝礼

DATE : 2010/11/16
日程:11月10日(水)

 

 今週の「水曜朝礼」は
高校3年D組の近藤先生よりお話がありました。

 おはようございます。いろいろなお話を考えていたのですが、他の先生方のように深くためになるお話ができそうもないので、私が経験していて、みんなが経験していないだろうなと思われる話をしようと思います。

 みなさんはホエールウオッチングというのを聞いたことがありますか。1日中船に乗って、鯨の姿を追いかけるものです。ここでは私が経験したドルフィンスイムという話をしたいと思います。
 東京都には23区以外にも島が含まれることを知っていますか。伊豆七島と呼ばれるものがそうです。大島、利島、新島、神津島,三宅島,小笠原諸島などです。この三宅島の隣の御蔵島という島でドルフィンスイムが経験できます。この島は東京から南へ約200km,断崖絶壁に囲まれた小さな島です。暖かい暖流である黒潮の真ん中にあり、イルカにとって餌が豊富で、天敵もほとんどいないのでイルカが子育てをする島として有名なところです。イルカはこの島の周囲に400~500頭ほど生息しており、島を1時間くらいで1周すると必ずイルカに出会えます。この島へは船を使うしか方法が無く、東京を夜10:30に出航して,御蔵島に朝の6:00に接岸するのです。運が悪く台風などが来ると、下船せずに八丈島まで行って戻ってきて海況が許せば御蔵島に降りられますが、最悪の場合はまた東京へ逆戻りです。

 御蔵島でのドルフィンスイムの方法は、まず水着、マスク、シュノーケル、フィン、ウエイトをつけて小さな漁船に乗り、イルカを探します。イルカが見つかったら、船をイルカの群れの進行方向につけ、船長さんの合図でお客さんはイルカの群れに向かって泳ぎ、イルカと戯れるというものです。

初めてドルフィンスイムを体験したときのことは未だ忘れられません。
まず水中に入ると飛び込んだ勢いで体が1mくらい水中に沈むのですが、浮き上がった後、足下を見ると、水の透明度が高すぎて、足が全く届かないくらいの海底の深さに気づき、ちょっと気が動転してしまいました。
シュノーケルクリアをして、スーハースーハーと深呼吸を何回かくり返し、自分の気持ちが落ち着きました。
すると海底を見ていた私の耳に「ピピー、ピピピ、ピピー」とどこからともなく高周波の音が聞こえてきたのです。「何の音だろう?」と思って、顔を水面に上げると、なんと自分の顔の真正面にイルカがこちらを向いていたのです。手を少し伸ばせば届くところにイルカがいるのです。そしてイルカと目と目があったのです。
これは感動でした。衝撃でした。自分とイルカを遮る物が何もない状態での対面なのです。先ほどの音はイルカが行うエコーロケーションで使用する超音波だったのです。

 

この経験ですっかりドルフィンスイムにはまってしまった私は、何年か続けて御蔵島に通うようになり、そのうち自分独自の方法を見いだしました。
通常、海に入ったらイルカの群れに向かって泳ぐのですが、私はあえて群れとは反対の方向に泳ぐのです。そうすると他のお客さんの脇を通り過ぎてきたイルカの群れと、同じ方向に泳ぐことになるのです。うまくいけば、しばらくたった後に、イルカの群れが自分の周りを覆い尽くすのです。自分の上も下も左も右も、周り全てがイルカだらけになり、あたかも自分がイルカの群れの一員になったようになるのです。
1mも離れない近距離で、自分と平行して泳ぐイルカ。
イルカってとっても大きいんですよ。
体の幅なんて1.5mくらいあるんです。
それでイルカの目がジロって、きちんとこちらを見ているんです。
たまに胸びれが私の体に当たったりするんですよ。ちょっと怖いんです。
けれど感動なんです。
またイルカは好奇心が旺盛ですが、こちらがイルカの気を引くようなことをしないと、すぐに飽きて過ぎ去ってしまうのです。しかし御蔵島は本当に野生のイルカが生息しているので餌をやってはいけない、手で触ってはいけないという厳しいルールがあります。ですからイルカに感動しつつも何かをしなければ、と思い、両手を胸の前でヒラヒラさせて泳いだりして、なるべく長い時間一緒に泳いでいられるようにしました。

このドルフィンスイムは東京からの長い船旅、また海への出入りなどを頻繁に行うので体力的にかなりきついものです。
ですから本当に若くて体力のあるうちしか難しいと思います。生徒の皆さんも、中学校、高校のうちにしかできないことがあるはずです。そういうものを1つでも多く見つけて、楽しく幸せな人生を育んでいってほしいと思います。