イベント

水曜朝礼

DATE : 2011/6/25

「水曜朝礼」では
中学2年A組副担任の加藤先生よりお話がありました。

夏至について

みなさん。おはようございます。理科を担当している加藤です。

今日は季節の区分上の重要な日であることを知っているでしょうか。
みなさんも言葉は聞いたことはあると思いますが,今日は夏至の日です。
夏至とは季節の分け方のうち,最も日中時間,日の出から日の入りの時間が長く,最も太陽の南中高度が高い日のことです。つまり,今日は一年を通して最も太陽が長い時間出ている日です。北半球にある日本では,地球の自転の回転軸が少し斜めに傾いているため,夏のこの時期に日中時間がもっとも長くなるのです。

そこで一つ疑問が生じます。
この疑問は皆さんも感じたことがあるかもしれませんし,もしからしたら答えを知っているかもしれません。その疑問とは,なぜ夏至の日は一年で一番暑い日でないのか,という疑問です。

光はものを暖める能力、つまりエネルギーを持っています。ものにあたった光の量によって,暖まり方は変化します。たくさんの光があたると,ものの温度は暖まります。曇った日よりも晴れた日の方が気温以上に体感温度を高く感じるのは,服や体に当たる光の「量」に差があることが原因の一つです。

このように考えると,一年のうち夏至は一日で最も光の量が多く届き,最も暖かくなるのではないかと考えられます。しかし,実際は7月や8月の夏休みのころが最も暑いですね。この一年間の気温の変化を今からお風呂にたとえて話をしたいと思います。ただし難しいことは考えず,曇っていたり雨が降ったりはしていないものとします。

今から考えるお風呂には排水溝があって,上に蛇口がある,ごく一般的なお風呂です。まず栓を抜いたお風呂を考えてください。栓を抜いたお風呂に蛇口から水をひねるとどうなるでしょうか。当然ですが水は排水溝から流れていきます。それではこの栓を抜いたお風呂に水をためることはできるでしょうか。これはできますね。いっぱい蛇口をひねって,流れでていく水の量よりも多い水の量を注いであげればよいのです。いま,お風呂に水が半分くらいたまっています。栓が抜かれたお風呂で今の水位を保つためにはどうすればよいでしょうか。そのためには,蛇口の開きを調節して,流れ出る量とちょうど同じだけの水を注ぐ必要があります。たとえば1秒間に1㍑の水が流れ出ていくならば,蛇口からも1秒間に1㍑注がなければなりません。それではこの状態よりさらに少し多く開く,つまり1秒間に1.5㍑注ぐとどうなりますか。排水溝から流れ出る水はいつも1秒間に1㍑で変わらず,注がれた方が多いので,水位は上がってきます。次に蛇口を最大に回します。すると蛇口からは注ぐことが可能な最大の量,たとえば1秒間に2㍑が注がれます。このときは,水位があがる勢いは最大になります。そこで少し蛇口を戻し,たとえば1秒間に1.5㍑に戻したとします。このときは水位の上がる勢いはおちるものの,まだ水位は上がり続け,蛇口の開き具合が,ちょうど流れ出る量とちょうど同じだけ,つまり1秒間に1㍑の状態に戻るまで,水位は上がり続けるのです。

このお風呂の話と年間気温の変化は,蛇口から注がれた水の量が太陽からの光の量,水位が一日の平均温度,排水溝から漏れている水が地球から外に逃げ出していくエネルギーに対応しています。夏至の日は,お風呂の例では蛇口が最も開かれている時に当たり,地球から出て行くエネルギーに対して,入ってくる光の量が最も多い日に当たります。つまり,一日の平均気温の上がる勢いが最も大きい日なのです。さらに,夏至の次の日も,その次の日も,蛇口の開きはすこし小さくなるものの,水位は上昇している,つまり,一日の平均気温はまだ上がり続けるのです。

つまり,今のモデルでは,夏至は平均気温の上がる勢いが最も大きい日なのであって,決して最も暑い日,つまり最も水がたまっている日ではないことがわかります。夏至を過ぎても,まだ入ってくる光の量が多いので,平均気温は上がり続け,やがて暑い夏を迎えるのです。

このような身近な疑問でしたが,単純な例え話にして伝えることによって,少しわかりやすく考えることができたのではないでしょうか。理科で何か不思議なことを考えるとき,たびたびこのように例え話を作ります。このように例え話にして表現することをモデル化するといいます。モデルには適不適,長所短所は存在しますが,よく知られている例に当てはめることで,わかりやすく考えることができるので,重要な考え方の一つです。皆さんもこれから多くの人が理科の考え方に接することになりますが,「モデル化」という扱い方を知っておくことで,理解の助けになるのではないかと思います。

以上です。ご清聴ありがとうございます。